Pentax K-7 レビュー
使い続けて早5年。 一番長く使っているデジタル一眼レフになります。ただし「良いカメラ?」とか「お薦め?」と聞かれたらまぁ、その、なんですね「人には絶対お薦めしないカメラだよね!」というしかない。とにかく「これ風景専用だから細かいこと気にすんな!」みたいなPentaxの意識があちこちから感じられるんだわ。
ボディ回り
個人的に大嫌いだったK10D/20Dからデザインは良くなった。着ぶくれしてたボディが引き締まってバッグの出し入れでも小ささを実感する。30g軽くなったとはいえ、小型化したボディに中身が詰まっているので、むしろ重くなったように感じるかもしれない。手振れ補正の切り替えスイッチがなくなったのも助かる。K10Dを肩からかけてると勝手に切り替わるんで困ってたんよ。
ファインダー
光学ファインダーはK10D/20Dよりかなり良くなった。ピントのピークも見易くなったし、視野率100%は使ってみると良いもんだ。APS-C機のなかではマトモなほうではなかろうか。とはいっても、フォーカスエイドに頼ったとしても28mmレンズでもうMFでのピント合わせはキビシい(FA28mmがなかなか手に入らんので…)。当然フィルム時代のMINOLTA α-9やCanon F-1みたいなのと比べちゃダメです。「こいつら高級機じゃん」という方には同じくMinoltaのX-700とかα-7+Mスクリーンあたりを中古屋で確認してくだされ。
AF
MFレンズのUltron40mmがメインなのでAFは普段はほとんど使いません。たま~にAFを使うと「これってレリーズ優先できないの?」みたいな事に驚かされる。いや、これ当時のPentaxの最上級機ですよ、一応は。設定すらないのは不思議。
ほぼ中央固定でしか使わないが精度は問題ないかな。動体は普段撮らないのだが、置きピンが無難ですかね。規則的な動きならAFでもいいんじゃないかと。
露出は安定していて大外しはなし。 オールドレンズでは絞りこむと露出が多少ズレますが、こんなもんでしょ。
センサー
あちこちで何かと貶されていたセンサー。ペンタックスは「最良のものを選んだ」とかいってるが、K20Dのものを小改良して使い回さざるを得なかったのは明らか。同時代のカメラより実質的に1世代遅れのセンサーなのでたしかに高感度は弱い。
でも世間一般でいわれているほど悪くない。自分はISO2200ぐらいまでは使うかな。それ以上は厳しいけど設定できないよりはマシ。色ノイズは消して輝度ノイズは残すという方向性は悪くない。高速読み出しでK20Dよりノイズが増えた云々は気にするだけムダ、団栗の背比べです。A3プリントも1400万画素もあれば十分。
ダイナミックレンジは感覚的にK10Dのソニー製1000万画素CCDとあまり変わらない。RAW現像前提ならちょっとだけ1000万画素CCDの方が上かな~程度の差。今のセンサーと比べたら……さすがにダメだけど。そりゃダイナミックレンジがあるに越したことはないけれど、DRE(ダイナミックレンジ拡張)を使えばそこまで大きな不満はない。
画質は?
正直なところ、購入当初は???な感じだった。 とりあえずjpgは無難そうな「ナチュラル」を選択したのだが……これは罠。ナチュラル=ニュートラルではなくて自然というかnature向けって事?スカイライトフィルター使用前の作例みたいな感じ。かなり青が強調されるというか、青かぶりにしか見えない……
自然な色味がいい場合は「人物」がお勧め。人物+好みに合うコントラストに設定してからはjpgも悪くない。CTEは環境光を強調するオートホワイトバランスとは真逆の設定。これがけっこう良くできていて記憶色に近い色を出してくれる。
撮影時のコツとしては「オーバー目の露出を心がける」 CCD機の場合白飛びに耐性が無く黒潰れには余裕があった。なので白飛びを抑えたい時はアンダーで撮ってRAWで持ち上げというのがセオリー。K-7はCCD機と真逆の性質を持っていてオーバー側には余裕があるがアンダー側は余裕がほとんど無い。黒潰れ警告が出た箇所はRAWでも救えない。その一方で白飛び警告は1段ぐらいOKでDREを併用すればもっといける。
DRE使用時の暗部の荒れ対策としても露出多めが吉。オーバー目に撮影することで高輝度側を意図的に圧縮させる。その結果として中間からシャドーの割り当てが増える事になる。ネガフィルムで念の為1段オーバーで撮るのと似た感覚か。警告表示が信用できるようになったので露出の調節はK10Dよりも楽になった。
K10Dの時は低輝度側の情報量がものすごかったので、高コントラストの被写体だと後からRAW現像で持ち上げる前提でドアンダーで撮る事が多く、同時記録のjpgが非常に冴えない写真ばかりだった。(今にして思えばK10Dは白飛びさせる勇気も必要だったな。)
K-7からはjpgで適正露出か若干オーバーがRAW現像でも丁度よくなったので、同時記録のjpgも明るさかキーをいじって現像後と同じぐらいになるよう調整しておけばけっこう使い物になるようになった。
画像がなんとなく甘い?という人には単焦点をお薦め。同時代のズームと単焦点を撮りくらべるとシャープネスにけっこうな差が出る。それとK-7はダイナミックレンジが広いとはお世辞にも言えないのでハイコントラストなものより階調豊かなレンズが合う。例えばSIGMA17-70で潰れてしまうシャドーもUltron40mmなら調子が残ったりする。こういった差に気づいて単焦点をメインに据えてからはK-7の画質にあまり不満がなくなった。私見ではあるがK-7+安ズームは甘い描写の中にアンシャープマスクでノイズだけがキリっと浮かびあがる最悪の組み合わせと思う。(某18-55mmとかね……)
RAW現像に使うソフトは安定性のLightRoom、色合いの自然さと解像感に優れるCaptureOneってところでしょうか。
手振れ補正が怪しい
いや、低速では効くんですよ。問題は1/125s
カメラを使った経験がある人ならブレちゃう時ってわかるじゃないですか。「あ、シャッター切った瞬間にカメラ下げちゃった」とか。それにシャッター速と画角の組み合わせでもある程度推測できる。K-7は手振れ補正ON時に1/125s前後でその経験則から外れた妙なブレ方をする個体があるんですわ。そんで見事にそれを掴んじゃったと。
海外フォーラムなんかでも話題になったので検索をかければ出てくるはず。ボディとシャッターユニットの相性?とか推測はされてましたが……再現性があまりないし個体差もあるので価○.comなんか見るとデマ扱いしてる人もいたなぁ。今なら「微ブレ」という現象として認知されてるのかな?
(追記:便宜上微ブレという表現をしておりますが、そのブレ具合は全然『微』じゃなくもっと盛大にブレるというか流れます。どうやら組み合わせるレンズによって相性があるらしくDA40Limitedはほんとに酷かった…)
この何時ブレるんだか予測できんというのが気持ち悪いというか信用できなくてイヤだったので、私は保証が切れる前にSSへ持ち込んでシャッターユニット交換してもらいました。それ以後は症状は出てません。中古で買う時は要注意です。
あ、自動水平機能もちゃんと水平とれているか要チェック。SSの人曰く「使ってるうちにズレちゃうんですよね」…私のK-7なんて新品購入時からズレてましたが。
それと高速シャッター時もごくわずかにブレてる印象。こちらはユニット交換後もあまり変わらなくて補正を切った方がシャープに撮れる。K-7の画像って画素数の割に甘い印象だったのだが、これの影響もあったのかなと。対処法は1/125も含めて手ぶれ補正を切るが手っ取り早い。
その他
フィルム時代からPentaxのレンズラインナップは偏っていたのですがデジタルになっても相変わらず、というかもっと偏りがひどくなったような。これまではレンズメーカーがラインナップの穴を埋めてくれてたが最近は見放され気味なのがかなり痛い。
Kマウントのレンズをもってる人ならK-7は選択肢に入れてもいいかな。の~んびりフィルム時代みたいな感じで、じっくり腰を据えてピントと露出を合わせて撮るなら悪いカメラじゃない。やはりK-7の低感度の画質は発色など良いです。
いい部分もダメな部分もひっくるめて「手持ちの札でどうやりくりするか」を考えられる人なら大丈夫。 「仕事で使う」「速く確実に楽に撮りたい」みたいにカメラ任せにしてちゃんと撮れないとダメな人は止めとけとしか言えない。