ネット界隈では「何だかなぁ」と思う言いまわしがけっこうある。もう慣用句として定着化してるっぽいのでツッコミを入れても不毛だしなぁとスルーしてるが、それでも気になる。

ノイズリダクションで油絵?

こういう事を言う人はおそらく実物の油絵をろくに見た事がないのではなかろうか。たぶん印刷物やネットの画像で見た印象派の絵のような漠然としたイメージを持ってるだけなんじゃないかね。印象派やポスト印象派の絵が日本だと一番ポピュラーだからさ。

まあ、日本の近代洋画ってのはちょうどこれらの影響をモロに受けてるから余計にそういう印象を与えちゃってるんだと思うけど。地方の美術館とか行くとそういう影響を受けまくった世代の郷土画家の絵をメインで展示してたりするし。

だからといって印象派の絵ってイメージだけで全部「油絵」で一括りにされちゃうとさすがに閉口するのです。写真でいったらボケ・ブレ・粗粒子とかの中から1ジャンルだけ抜きだして、それが全てかのごとく「写真、写真」って揶揄されてるようなモンです。そんな扱いされたらさすがに反論したくなるでしょ?

コンデジの強烈なノイズリダクション+シャープネス処理をした画像の印象って油絵とむしろ対極。油彩は近寄って見ればコンデジ等倍のヌメっと質感を失った画像と違って色んな質感が見えてくる。

油絵具

油絵具ってのは非常に物質性の高い絵具で可塑性が高く、乾燥しても嵩がほとんど減らないため、油絵の表面を見ると筆目やらも合わさってかなりボコボコしております。そしてキャンバスの目や下地に塗ったものの凸凹も活かして、立体的に重なったり透けて見える絵具の層…。塗り絵とは方向性が全く違って、物としての厚みのある絵具を積み重ね色んな質感を組み合わせて表現してる訳です。

さらに、人によっては質感を変えるために絵具に何か混ぜたり…。古典的な透明な絵具を何層も何層も薄く塗り重ねたり、物質性を出さず均一な画面になるよう描く人も。例えば藤田嗣治の絵は印刷物や画像ではそう見えないかもしれませんが、あれ油彩です。

今はアクリル絵具が普及しているのでやりませんが、昔は油絵具をシンナーで溶いてエアブラシで吹き付ける人もいました(美大の油でシンナー使うと危険なので怒られます)。

こんな感じでけっこう自由度の高い・多様性のある画材だしモネとかルノアール、セザンヌ、ゴッホあたりのイメージだけで決めつけられてもちょっと、ね


という訳でコンデジノイズ塗り潰しガチガチシャープ画像を油絵と言っちゃうのは、訳のわからん絵を何でもピカソと言っちゃうのと同レベルの決め付けと思っちゃうのでございます。「車の知識は頭文字Dだけなのに車に喩えて語っちゃう人!」ぐらいカッコ悪いと申しましょうか。よく知らないものを喩えに使うのはやめたほうがいいんじゃないかしらん。(ブーメランにならんよう自分でも気を付けないとなぁ)